飼育スタッフ

vol.002

2014.06.30(Mon)up!

展示飼育部 佐藤亜紀さん
子どもの頃から憧れていたイルカのトレーナーを目指して、専門学校を卒業。実習中に淡水魚と出会い、魚類や両生類へと興味を広げる。京都や兵庫の水族館で熱帯魚、淡水魚の飼育員として勤めた後、2011年4月、オープンを約1年後に控えた京都水族館に入社。開業準備から携わる。オープン後は、淡水チームの一員としてオオサンショウウオをメインに担当する。休日は釣りや波乗りなどに親しむ、根っからのいきもの&海好き。

いきものの不思議と 魅力を伝える。

一昨年、京都駅のほど近くに待望の大型水族館がオープンした。
佐藤さんは、その京都水族館で【看板生物】のオオサンショウウオを担当している。
かつてイルカのトレーナーを目指していた彼女が、いま夢中になっていることとは。
しごとを通して感じたコト、学んだコト、いまだからわかるはたらく気持ちを伺った。

お客さまに伝えたい 知られざるいきものの姿。

京都市街に初めての 水族館ができるまで。

 2012年3月、海のない京都盆地に初めて水族館がオープンした。豊かな生態系をたたえる京都の川を展示のメインとする、京都水族館だ。
「よく見ると小さな目がかわいくて、手も赤ちゃんみたい。オオサンショウウオは、動きもとても愛嬌があってかわいいんです。鴨川の上流にも生息しているんですよ」
 水族館で最初に出迎えてくれる 【看板生物】の魅力を、そう教えてくれた佐藤亜紀さんは、ここでオオサンショウウオの担当をして4年目になる。彼女の話を聞くと、一見おっかない外見のいきものが、愛嬌たっぷりに見えてくるから不思議だ。
「子どもの頃からイルカのトレーナーになるのが夢で、専門学校の実習でも常にイルカが中心でした。でも、ちょっと魚を見せてもらってから、『魚、おもしろい』と思ったんです」
 淡水魚の魅力にハマり、魚類と両生類へ興味を広げてきた佐藤さん。これまで勤めた水族館でも、淡水魚を中心に担当してきた。そんな彼女が京都水族館へ来たのは、まだオープンする前のことだった。
「水族館の立ち上げなんて、めったにないこと。開業前から来ないかと声をかけていただいて、すぐ決めました」
 夢にまで見た水族館の立ち上げ作業は、初めて体験することばかり。オープンまでの1年は、担当する淡水魚の魚名版をつくったり、水槽のレイアウトを話し合うところから始まった。
「一番大変だったのは、いきものの採集です。もちろん何でも集めればいいわけではなく、『この種類のこの魚』を見つけるために、泊まり込みで行くことも。自分たちで採集するだけでは間に合わないので、漁師さんの船に乗せてもらい、冬の琵琶湖に早朝から漁に行ったこともあります」

いのちを育て見守り 次のいのちへとつなぐ。

 京都水族館では、京都の大学や博物館などとコラボレーションし、遊びながら学べるイベントを多数実施している。飼育スタッフである佐藤さんも、お客さまとふれ合う機会は多い。
「良かったなと思うのは、やっぱりお客さまの声を聞いたとき。レイアウトや企画を担当した展示で、『今日は来てすごい良かった』と言ってもらえたり、たくさんの意見を聞けたときは、うれしいですね」
 佐藤さんの視線の先には、いきものだけでなく、常にお客さまが喜ぶ姿がある。それは、水槽の見せ方1つにも表れている。
「水槽のレイアウトは、自然界でそのいきものがすんでいる環境を再現するのが基本です。隠れる場所をつくってストレスをなくすようにするんですが、お客さまからいきものが見えないと意味がありません。淡水チーム全体で意見を交わし、つくっていきます」
 そんな佐藤さんが、いま目標としていることがある。
「ドジョウをはじめ淡水のいきものの繁殖を担当しています。繁殖例を真似してもうまくいかないことがあるので、水流を変えたり、照明時間を変えたり、繁殖しやすい環境づくりを探っています。なんとかうまく繁殖させたいですね」
 長く淡水魚を飼育してきた佐藤さんも、自然の川や書物から学ぶ毎日だという。まして、【生きた化石】とも言われるオオサンショウウオの生態には、まだ謎が多い。
「最初、担当になれたときはうれしかったですが、オオサンショウウオのことは全然分かりませんでした(笑)。でも、普通に生活していたら出会えないいきものに出会えて、毎日関われることは、本当にここでしかできない経験です」
 一筋縄ではいかない、いきものを扱う仕事。だからこそおもしろいと、根っからのいきもの好き、海好きの佐藤さんの笑顔が語っている。
「かのシーボルトが飼育していたオオサンショウウオで、約50年生きた記録が残っていますが、寿命は100年以上とも言われていて。私も長生きしなくちゃですね(笑)」

しごとのツボ

Q. 仕事で大切にしていることは?
A.いつも新しい気持ちで観察すること。当たり前になると病気などの異常を見落としてしまうため、それぞれの魚の泳ぎ方などを覚えて、しっかり観察する。
Q.この仕事の醍醐味は?
A.いきものにふれ合えること。大好きないきものの生態や魅力がお客さまに伝わり、「来て良かった」「また来たい」と言ってもらえたときは、さらにうれしい。
Q.プロフェッショナルな技は?
A.魚類を繁殖させる際、成功例や本を参考にするだけでなく、水流や照明時間を変えるなど、それぞれの現場によって環境づくりを工夫する。
取材者からひと言
いきものを扱う仕事には、大きな責任がともないます。でも、笑顔で話す佐藤さんの横顔からは、責任という言葉だけでは足りない、いきものへの深い理解と愛情が伝わってきました。一日も欠かさずいのちをつなげる佐藤さんたち飼育スタッフの努力があってこそ、いきもののさまざまな表情や自然の大切さに親しむことができると、改めて感じました。
会社プロフィール:京都水族館
2012年3月、日本初の内陸型大規模水族館としてオープン。京の川や里山から大海原まで、バラエティに富んだ9つの展示ゾーンがある。ワークショップやバックヤードツアーなど、遊びながら学べる体験プログラムを定期的に実施している。

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取材・撮影日=2014年6月3日



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