イルカトレーナー

VOL.005

2014.08.04(Mon)up!

神戸市立須磨海浜水族園 飼育展示部 海獣飼育課  課長 古田圭介さん
理科教師だった父の影響もあり、虫を捕ったり魚を捕ったり、自然の中で生きものとふれ合うのが好きな子どもだった。大学では水産学部に学び、1999年4月、神戸市立須磨海浜水族園に入社。以来、イルカを中心に海獣を担当する。現在は、現場に出ながら課長としてチームをまとめ、より地域に必要とされる水族館を目指して奮闘中。休みの日は、マッサージや映画館に行ってリラックスし、須磨海岸をジョギングすることも。挑戦したいことは、英会話。

豊かな海といのちの大切さを伝える。

自然と親しんだ幼少時代に、動物と関わる仕事に興味を抱いた古田さん。
市民に愛される水族館でイルカトレーナーとして10年以上活躍し、
環境教育や地域活性化といった、水族館を飛び出す新たな試みに携わっている。
しごとを通して感じたコト、学んだコト、いまだからわかるはたらく気持ちを伺った。

輝く海で育まれるいのちをつなげたい。

動物たちから学びお客さまを笑顔に。

須磨の海をイキイキと泳ぐイルカたち。まるで海外のビーチリゾートのような光景は、須磨海浜水族園が取り組んでいる、須磨ドルフィンコーストプロジェクトだ。
「ドルフィンコーストは、この環境を守りたい、須磨地域の活性化にもつなげたいと昨年から実験的に始まり、今年、本格スタートしました。イルカを見ながらその生態や豊かな海について学べる展示や環境学習会も、無料で楽しんでいただけます」
 日焼けした肌がまぶしい古田圭介さんは、このプロジェクトをけん引するイルカトレーナー。大学の水産学部から須磨海浜水族園に入社し、イルカを担当して今年で16年目になる。
「子どもの頃から、動物園や水族館はもちろん、自然の中でたくさんの生きものとふれ合ってきました。イルカに特別こだわりがあったわけではなく、動物に関わる仕事がしたいなと思っていました」
 園内で行われるイルカのショーは、イルカライブと呼ばれる、まさにライブ形式。4~5頭のイルカとスタッフたちの息が合って初めて、ショーが成立する。
「イルカはトレーナーの合図を見ているので、2~3ヵ月間練習すればデビューはできます。ただ、動物にはその日の気分や体調があるため、個体の特徴をとらえることと、トレーナー同士の連携が大切です。最初は夢中で周りなんて見えません(笑)。5年10年くらいたってから、楽しめるようになりました。そういう意味では、ずっと動物から学ぶ仕事かもしれませんね」
 日々動物たちとふれ合う仕事のやりがいは、お客さまの笑顔だという。
「話に聞き入ってくださり、こちらの言いたいことが伝わったかなと思うとうれしいですね。ここにお越しいただいたことがきっかけで家族の会話が増えるかもと思うと、さらにうれしいです。イルカの技が決まるより、うれしいかもしれません(笑)」

いのちを育む須磨の海を守る。

古田さんはイルカトレーナーであると同時に、2年前から海獣飼育課の課長職も務めている。
「もちろん現場は楽しいですが、後進を育てていくのも組織にとって重要な仕事。今はチームづくりに重きを置き、水族園全体を見ています」
 動物と接しても接しなくても、働く上で大切にしていることは、共通している。
「自分自身が楽しむことです。それは、動物にもお客さまにも、チームのみんなにも伝わります。新しいことをするのは大変ですが、逆に言えば、課題と向き合っているからこそ楽しい。どうやって乗り越えようか、『やってやろう』という気になります」
 『大変なことの方が多いかも』と笑う古田さん。自分では何も言わない動物たちを見守るスタッフの緊張は、計り知れない。それでも古田さんは課題を楽しみ、トレーナーとしてだけでなく、経営や企画といった視点からも水族園の未来を見つめている。
「これからの水族園に求められるのは、来る人に楽しんでもらう[遊ぶ施設]だけではないと感じます。教育の場であり、地域を活性化していく場。その一歩が、ドルフィンコーストです。このプロジェクトは、神戸市をはじめ、漁師さんや設営に携わる方、多くの協力があってできたこと。水族園の1つの展示ですが、地域全体を巻き込んでいるんです。昨年も嵐のときにすぐ漁師さんが助けてくれて、地域とのつながりを実感しました」
 立地にも恵まれた水族園へ、地域から寄せられる期待は大きい。
「イルカがかわいいね、だけでなく、じゃあどうしたらイルカがイキイキと生きられるのか。もっと外へ飛び出し、須磨で育まれている生きもののこと、ここでしか学べないいのちのつながりを、広く伝えいきたいと思います」

しごとのツボ

Q. 仕事で大切にしていることは?
A.自分自身が楽しむこと。それは、動物にもお客さまにも、チームのみんなにも伝わる。大変なときも課題と向き合って乗り越えていくから楽しい。
Q.この仕事の醍醐味は?
A.お客さまの笑顔。話に聞き入ってくれて、伝わったと思うとうれしい。水族園に来たことがきっかけで家族の会話が増えるかなと思うと、さらにうれしい。
Q.プロフェッショナルな技は?
A.イルカそれぞれの個体の特徴、その日の気分や体調をとらえ、トレーナー同士で息を合わせてショーを完成させる。
取材者からひと言
生きものの魅力を伝え、その生きものたちが輝き続けられる環境を守る活動にも取り組んでいる古田さん。トレーナーの仕事は飼育だけではありません。動物の健康管理、エサの調達、人と交渉したりお客さまの前で話すこともあります。もちろん体力が資本。トレーナーを目指すなら、「生物を学ぶだけでなく、幅広く興味を持って勉強することが大切」だそうですよ!
会社プロフィール:神戸市立須磨海浜水族園
1957年に開館した、市民に親しまれる水族館。約600種、約13,000点の生物を飼育展示している。須磨ドルフィンコーストは、8月31日(日)まで開催中(天候により中止の場合あり、有料体験もあり)。

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取材・撮影日=2014年7月4日



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