飼育員

VOL.13

2014.10.06(Mon)up!

海遊館 棚田麻美さん
物ごころがつくころから動物が大好き。幼少期に観た動物のTV番組の影響で獣医を目指すようになる。学生時代には近所の動物園にも足しげく通うが、大学受験時に獣医の夢を断念。その後、動物園のアルバイトを通して飼育員の仕事を知り、2010年6月に株式会社海遊館に入社。趣味は英会話。ラジオや海外ドラマを観て独学中。挑戦したいことは海外旅行。世界の水族館を訪ね歩きたい。

生きものの不思議と 感動を体感する。

生きものとふれあえる仕事をしようと、
飼育員になった棚田さん。
実際にふれあって、コミュニケーションを
とることの難しさを痛感する。
それでも好きで飛び込んだ世界、
周りにはこころが通う仲間がいっぱい。
しごとを通して感じたコト、学んだコト、
いまだからわかるはたらく気持ちを伺った。

生きものとふれあい 大切な命を守る。

ずっと寄り添い、 こころ通わせる。

 幼少期から動物が大好きだった棚田麻美さんは、3年前に株式会社海遊館に入社。飼育展示部の海獣チームに所属し、半年前からラッコの飼育を担当している。
「海遊館には2頭のラッコがいますが、そのうち1頭は、日本国内にいるラッコのなかで最高齢クラス。推定年齢は24歳で、人間にたとえると100歳を越える高齢です」
 平均寿命が15~20歳というラッコは、絶滅危惧種でもある。棚田さんは希少な命を預かる責任も担っている。
「飼育員の仕事には『3ジ』といって、餌をつくる『調餌』、餌を与える『給餌』、そして『掃除』があります」
 午前中に1日分の餌づくりをする棚田さんは、スルメイカをメインにウチムラサキ貝、サケ、タラ、アジ、シシャモ、ホッケなどをさばく。「ラッコは餌にこだわりが強い動物です。ぶつ切りより三枚おろしの魚の方を好むなど、好き嫌いがとても激しくて(笑)。それぞれのラッコの好みにあわせた切り方を工夫し、食べてもらうようにしています」
 そうして用意した餌を与えるときが、ラッコたちとふれあえる最も楽しい時間。でも、それだけではない。
「トレーニングをしながら餌を与えますが、このとき食べ具合や口の中の様子、体の動きなど細やかに観察します。大切なのは小さな変化に気づくこと。見逃して何かあれば取り返しがつきません。私はまだまだ勉強中なので先輩方のようにはできませんが、餌の切り方によって食べ具合の違いに気づけたときは、ラッコの気持ちに寄り添えたのではとうれしく思います」
 そう語り目を輝かせる棚田さん。水槽の掃除にもパワーを発揮する。
「北太平洋沿岸に棲息するラッコの水槽は、夏は12~13度、冬は10度。水温が低く、服の上からドライスーツを着て潜りますが、浮力で体が浮くため、15キロのタンクを担ぎ、10キロの重りもつけます。水中は楽ですが、地上では歩くのもひと苦労です」

命を見守る、 感動がある。

入社して間もないころ、棚田さんを悩ませた出来事があった。
「最初に担当していたアシカが、私のカッパだけを噛むという出来事がありました」
 噛むという行為がショックだった。
「カッパはビニール製のズボンで、それを履いてトレーニングをするのですが、カッパの端を噛んで破るという行為が何度かありました。私はアシカのことを好きなのに、どうして気持ちが伝わらないのかといろいろ悩みました」
 でも、落ち込んでばかりはいられない。関係を改善しようと、棚田さんの猛アピールが始まる。
「とにかく日頃からコミュニケーションをとり、空き時間があれば水槽を見に行き、何度も名前を呼んでアイコンタクトをとりました。餌を与えるトレーニングのときも、一緒に楽しもうと、常に話しかけるようにしました。『メッチャ好きやで!』という思いを力いっぱいアピールしたんです」
 棚田さんの思いは、アシカのこころに少しずつ通じ、やがてトレーニングも上手くいき出す。
「新しいことを教えたときに、『あ、わかった!』って顔をするときがあるんです。私も『よくわかったね!』っていう思いでいっぱいになって、テンションがあがります」
 そして、さらなる感動の出来事が起こる。
「実は、私を悩ませたアシカの初産を経験しました。産まれるまさにその瞬間を見守ることができたんです。新しい命の誕生に、これまで感じたことのない感動を覚えました」
 生きものたちとふれあい様々な経験を積む棚田さん。彼女には将来に向けての目標がある。
「まだ先のことですが、私がふれあった生きものの研究を、いつか国際的な場所で発表したいという大きな夢を描いています」

しごとのツボ

Q. 仕事で大切にしていることは?
A.生きものたちの観察時間をできる限りとること。ちょっとした変化に気づけるか、気づけないかで、後々に影響が及び、ときには命を左右することも。小さな変化を察知する時間が大切。
Q.この仕事の醍醐味は?
A.トレーニングなどを通して、気持ちが通じ合った瞬間。「できたよ!」って顔を見せてくれるときが最高!また、新しい命の誕生に立ち会うこともこの仕事ならでは。
Q.プロフェッショナルな技は?
A.生きものには個体差があり、それが如実にわかること。たとえば同じアシカでも、みんな顔が違い、性格も違う。長く一緒にいるとそれが当たり前になる。
取材者からひと言
棚田さんにとって海遊館は子どものころからよく知る一番身近な水族館。入社するまでに少なくとも10回以上は来館したとのことです。「一番の魅力は?」と聞くと、「いろいろな生きものを同じ空間で見られる一体感」と教えてくれました。大阪を元気にする水族館で、生きものの命を預かる仕事をする棚田さん。誇りをもって働く姿に元気をもらいました。
会社プロフィール:株式会社海遊館
海遊館、天保山マーケットプレース、天保山大観覧車を運営する。海遊館は1990年に開館。環太平洋の自然環境を14の巨大水槽で再現。それまでの水族館のイメージを一新し、コンセプトの光る水族館を打ち出した。

AiDEM 公式WebマガジンTOPへ戻る

取材・撮影日=2013年9月6日



ページトップへ戻る